奴隷アンドロイドの外部パーツ――ワイヤレスイヤホン――
何気なく惰性でアマゾンにアクセスし、ぼさっとサイトを眺めていると、奴隷搾取労働の上に成り立っているのであろうセールが行われていて、その中にワイヤレスイヤホンなるものがあった。
ワイヤレスイヤホンというのは文字通りワイヤレスなイヤホンで、音源機器とイヤホンをbluetoothという無線技術によって繋ぐことができるため、ワイヤーが存在せず、ワイヤーによる煩わしさが消滅するが故に、なかなかいい感じのデバイスである。ということは想像していたのだけれど、まぁ、今ある有線イヤホンが壊れてから購入を検討することにしようかしらん、と思っていた。
しかーし、この世はまじで諸行無常で、そのセール広告を見てからというもの、ワイヤレスイヤホンへの想念みたいな感じのニュアンス的なものが我ががらんどうの脳髄の中をぐるぐると巡りに巡り、ここでオスカー・ワイルドの「誘惑を打ち消すには誘惑に屈するしかない」という名言を独善的に解釈し、気が付いたら注文が完了していた。
遅かれ早かれいずれは買う商品。なら安い内に手に入れておいたほうがいいではないか。そうじゃないか、そうじゃないか。おれの選択は間違ってへんど、と購入直後はアマゾンの権謀術数に見事にかかってしまった己への嫌悪感を紛らわせるのに腐心していたのだけれど、いざ商品が届いて使い始めてみると、びっくらこいた。
長時間労働特化型納税奴隷アンドロイドの無味乾燥な日々に、ささやかな彩りを実感した。ありとあらゆる物事の価値が悉く金銭で測られてしまいがちなこの閉塞的な社会に、ささやかな革命を実感した。
掃除や洗濯をしている時、靴を磨いている時、料理をしている時、アイロンがけをしている時、筋トレをしている時、スマホやウォークマンを携帯せずとも難なく音楽を聴くことができることの快適感溢れる無線ライフがここに完成した。
衝動買いの多くは後悔をもたらす結果に終わるが、今回のは稀有な成功例だった。
衝動買いも馬鹿にはできないのかもしれない。奴隷労働で金を手に入れては衝動的に金を使いまくる典型的な長時間労働特化型納税奴隷アンドロイドの生活スタイルも馬鹿にできないのかもしれない。
これからは少し自分に自信を持って生きていこうかしらん。
P.S.
今日は肉じゃがを作ってみようかしらん。